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価値創造プロセス

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ビジネスと経済 

1.新時代の企業経営の必要条件

ESG(Environment/Social/Governance)という言葉は2019年現在日本でも浸透しつつあると思います。今、欧州では既にESG投資は全体投資の50%を超えており、今後ESGに配慮することは必須でしょう。

さて、そのような経済環境の中、私自身もクライアントに対してESGを説明し、提案実施をしていますが、現在の資本主義を土台とした経済環境における限界というものを痛感することがあります。

つまり、ESGがビジネス経済環境で重要なことは分かっている、では自社はどうしなければならないのか、どうしなければ遅れていくのか?継続的に売上を上げていくにはどうすればいいのか?といった感じで、要は自社が売上、利益を上げていくための「手段としてのESG」という考えになっている部分、そこに限界を感じるわけです。

そして、私が理念の大切さを説こうとしても、「いや、そんなことは分かっています。そんなことよりも、実際に非財務指標と財務指標の相関をどう算定していくかそこを教えてもらえませんか?」とテクニック面にしか興味が無い。「ああ、理念を分かっていないのだろうな」と思ってしまうわけです。

または、現在の経済環境、営業というものの実態を考えるとそうなのでしょうが、私が情熱をもって語ろうとすれば語ろうとするほど、「売り込まれる」と思われ、警戒されてしまう。そのような場面に遭遇すると、愕然として落胆してしまいます。

ESGの考えはこれは根本的には理念であり、これを実施することが最重要なことであり目的として考えられるべきです。手段ではなく目的です。

ESGは、収益性だけではなく社会性、倫理面も重視し、両者のバランスを取れた長期的持続可能な経営を行っていきなさい、それによって、社会に良いインパクトを与えて行きなさい、それが企業の果たすべき役割である、という話です。

明治維新の時に渋沢栄一は「論語と算盤」と言いました。これは非常に明確で分かりやすい言い方ですが、収益面だけではなく、倫理面も重視しなさいと言うことです。その両者によって社会に有益な価値を提供していきなさい、ということです。

「そんなことわかっているよ」と言うのですが、その会社の業務プロセス、企業経営の在り方、そういったものを見ていると、やはり分かっていないのだろうな、と思わずにはいられないわけです。

ですから、私が言いたいのは、経済の理念、経営の理念が一番大切であり、それを腑に落とすこと、それが何よりも大切なことであるということです。腑に落とすとは、企業経営の隅々までその理念が浸透していることです。結局、これが本当の意味で腑に落ちていないと、今後企業経営は存続することができなくなるでしょう。そのように世の中が変わっていくからです。

従業員の働き方、コミュニケーション、顧客対応、製品開発、マーケティング、営業の在り方、事業戦略、そういったあらゆる企業活動が理念に基づいているということです。それによって、はじめて、本当の意味で社会に対して有用な価値を提供できるということです。



〇なぜ理念が必要なのか?

ここまで言ってもなぜ理念が必要なのかわからないと思います。なぜ理念が必要か?それは理念が腑に落ちることによって、その人の考えが変わり行動に変革が生じ、結果としてビジネスを通して社会が変わっていくからです。「社会変革の根本原理」であるということです。次のようなプロセスを経ることでしょう。理念を腑に落とすことは極めて重要なのです。

この辺のプロセスは詳細は、「ビジネス変革の条件」、「競争から個性へ『Diversity Economics』」、「新時代の働き方」に記載していますのでご参照ください。

<理念と変革のプロセス>

@:現在の通常のビジネス環境では、その心の奥底には、現代の経済原理(資本主義経済という売上重視の経済、見返りを求める経済)に縛られている姿があるということ。「なぜESGをやるのか?」「それはみんながやっているから」。では、「なぜみんながやっているからやるのか?」「それはそうじゃないと企業が存続できないから。つまり売り上げが上がらないから」という売上に縛られた見返りを求める気持ちがある。

A:つまり、現代の資本主義経済という経済原理に縛られている意識であり、根底には見返りを求める気持ちがある。結果、奪い合いが生じ、競争が激化する。本来自らに集中すればいいところ他人との競争というエネルギーの無駄が生じている。個人単位で見ても、嫌なことを嫌々やっている。そのような状態が無意識に行われているということ。それが当たり前だと思っているということ。

B:このような状態では、信頼に基づいた経済はなかなか構築できないし、エネルギーの無駄が生じ、解放されない。個人単位でも、嫌なことを嫌々やっているので創造性が発揮されず、全体として更なる光り輝く発展、繁栄は生まれない。今の経済は、見返りを求めて嫌なことをやっている状態。現代の経済は小学生レベルの経済と言えるだろう。

C:この見返りを期待するレベルを突き破り、奉仕の世界に到達すること、それこそが、小学生レベル(見返りを求める資本主義経済)の学びから、中学生レベル(奉仕と感謝による個性の経済=Diversity Economics)の学びに到達するということに他ならない。※その方法詳細は、「ビジネス変革の条件」、「競争から個性へ『Diversity Economics』」、「新時代の働き方」に記載しています。

D:ここに到達することで、競争や利害関係による争いなどという無駄なエネルギー消費から解放され、非常に効率的で余裕のある、またそれぞれの個性が解放され、創造性クリエイティビティ豊かな経済が形成される。その段階に至ったときに、経済が今以上に繁栄、発展し、かつクリーンな経済であることが容易に想像ができるだろう。

E:これこそが、個性の経済である「Diversity Economics」であり、このDiversity Economicsこそが資本主義経済の次に来る経済になるであろう。ESGはこのための、入り口になるということです。いきなり奉仕と個性の経済と言われてもハードルが高い。そこに到達するための入り口としてのESG、そして、渋沢栄一の「論語と算盤」であるということです。私自身は、ESGや「論語と算盤」をこの将来的な経済へ向かうための入り口として利用させてもらっているということです。

F:本質的には、相対主義から絶対主義への変革であり、同時に、見返りを求める意識レベルから奉仕の意識レベルへの変革をも意味するということ。



〇ESG/SDGsの経済界の今後の潮流

さて、2009年のリーマンショック前までは、短期的な利益を重視する収益性重視の姿勢が非常に顕著だったと思いますが、それ以降、ESGの考えは徐々に浸透していき、収益のみを追求する姿勢は既に終えていると言っても良いと思います。

直近、マッキンゼーなど多くのコンサルティング会社、ブラックロック、バンガードなどの多くの運用会社が、「長期に視点を合わせ、収益性とESGのバランスを取り、社会課題の解決の方向性を模索せよ」、と言っていると思います。2016年9月には世界最大の年金運用会社であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を始めました。

特に今後、ミレニアル世代が経済の中心を担っていき、彼らの70%は社会課題の解決に対して非常に関心があります。つまり、収益のみを追求する経営には彼らは関心も持たなくなるのです。であれば、強制的にもESGを重視した経営というものが今後目指されていき、これは、一時の流行ではなく、恒常的なものであり、収益重視の経営の時代が終了し、「論語と算盤」のバランスを取った経営の新しい時代の始まりであると言っていいと思います。


〇価値創造プロセス

さて、そのような中で、私が非常に関心を持ち、また、常にクライアントに話をし、啓蒙し、また、提案をしているのは、国際統合報告評議会(IIRC)が公表する統合フレームワークに記載されている価値創造プロセスです。

ESGは、SDGsのように国連主導で17の目標がカチッと定まっているわけではなく、統合ガイドラインがありません。そのため、民間の非営利団体がいろいろなガイドラインを提示しているのですが、その最も影響力あるフレームワークのひとつが、統合フレームワークですね。

その中で、企業は6種(以下)の資本を元に、非財務指標、財務指標を統合し、社会に価値を提供していく価値創造プロセスの概念が記載されています。以下です。

                                 価値創造プロセス『統合フレームワーク』より抜粋

これは、新しい時代の経営の指針となるものであると思います。非常に大切なものであると思います。そして、これらの社会的なインパクトを今後定量化する技法というものを模索する必要がありますね。

2019年現在、日本企業全体で統合フレームワークを使った統合報告書を作成している企業は414社。一部上場企業は約2,200社存在し、そのうち380社程度が作成しています。つまり、一部上場企業の20%です。一兆円を超える企業では、143社中80%程度は作成しているようです。そして、その中で価値創造モデルに言及している企業は、全体の60%程度であるようです。

つまり、2019年現在日本企業で価値創造プロセスを考慮している企業はほとんどおらず、また、私自身、統合報告書を作成している企業様と話す機会もあるわけですが、実際に作成している統合報告書と意識レベルが異なっており愕然とする場合も多いです。

要は、今現在、日本企業全体として考えた時に、渋沢栄一の「論語と算盤」を実践して、その理念を心から腑に落として実行している、そのような企業はほとんど存在しない。そう言っていいと思います。そして、それと同時に、これは、必ず浸透させていく必要がある、企業経営のスタイルを変革し、新時代の経営へと変革していかなければならないと思うわけです。

私は、この価値創造モデル、そして、渋沢の言う「論語と算盤」が新時代の新しい経営スタイルであると強く信じています。

ですから、コンサルタントとして、各クライアントと話す際に今後も、新しい経営スタイルについては話し、提案していきますし、またこのホームページでも啓蒙、発信していきたいと思います。














Taigen Ogura Philosophy Labo

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