利他の心をもとにした経済

2009年のリーマンショックを経て、世界経済は曲がり角を迎えました。そして、現在は、ESG投資やSDGsなどが大分世界中に浸透していると思います。かつて渋沢栄一は「論語と算盤」、そして、道徳経済合一説の考えを提唱しました。100年を経て、ようやく人類も「論語と算盤」の理念を元にした、つまり、利他の心を元にした経済に向かおうとしています。

貨幣経済の根本的矛盾と今後の経済崩壊の危機

新自由主義的な資本主義経済における一番の課題は貧富の格差の解消でしょう。

それに加えて、私は貨幣経済はその構造に根本的な矛盾があると思っています。つまり、経済の成長期には総需要>総供給であり、経済は景気が良くなり失業率も解消し、貧富の格差も縮小するでしょう。しかし、経済が成熟すると、総需要<総供給に陥り、過剰供給で、売上は上がらなくなり、利益は圧迫され、コストダウン、リストラ、成果主義の採用といった形で、経済は厳しくなっていきます。勝ち負けは鮮明となり、貧富の格差が増大します。

これを解消するためには、新たな産業を興していくことが必要でしょう。そして、今はデジタルトランスフォーメーションの時代で、しばらくは経済も持ちこたえるでしょう。しかし、それが無くなったときに経済は今以上に厳しい状態になるだろうと思います。

経済は導入期、成長期、成熟期、衰退期というライフサイクルを辿り、必ず最後には衰退期となり、厳しい状態となります。そして、その衰退期において新たな産業を興していかなければ、継続した繁栄を築くことはできないのです。それは日本の失われた30年が証明しています。アメリカがいまだに世界経済のトップランナーを走っている理由は、ピンチの都度、1970年代からの金融資本主義経済、2000年代からのデジタル経済、と新たな産業を自分主導で興してきたからです。しかし、これで終了。今後は、厳しくなるでしょう。

この貨幣経済の構造的矛盾は、経済が利他の心をともなったとしても解消できない、根本的な欠陥であろうと思います。

無貨幣経済 お金の無い世界へのシフト

ここ数十年は、人類は、徐々に利他の心をともなった経済へとシフトしていくことでしょう。しかし、そこにおいても、上記貨幣経済の根本的矛盾は解消されず、経済は厳しい状況に陥るでしょう。

一方で、現在、GDPなど貨幣価値換算によって経済の規模を計測していますが、しかし、貨幣によって算定できない価値と言うものが現在、問題となっています。例えば、子育てなどがそうでしょう。また、デジタル化に伴い、低コストで高品質のサービスが提供できるようになっており、生活は非常に便利になっています。ところが、低コスト化しているがために、GDPの規模は縮小しているのです。これは、どういうことでしょうか?

貨幣経済は、今後、その構造的矛盾や貨幣価値換算の問題など、様々な矛盾を暴露していき、新たなる時代の経済が模索されるでしょう。ここに私は無貨幣経済、お金のない世界を提唱したいと思います。

お金のない世界に至る条件①奉仕の心

お金のない世界に至る条件は、人類が奉仕の心を持つことです。

現在の人類の意識レベルは利己主義的な、自分さえ良ければそれで良い、という意識が大部分ではないでしょうか?しかし、そのような意識でお金が無くなると、大変経済は混乱するでしょう。それは、過去の社会主義の壮大な「実験」によって実証されています。

ですから、上記の通り、今後、経済は崩壊の危機に向かうわけですが、同時に人類は、自分さえ良ければそれで良いという意識から脱却し、奉仕の心を育てていかなければなりません。つまり、愛に目覚めなければなりません。

人類が愛に目覚めること。それが、お金のない世界に至るための条件です。

お金のない世界に至る条件②個性の表現

お金のない世界に至る条件の2つ目は個性の表現です。こちらのほうが根源的かもしれません。

本当の意味での個性の表現とは、神の期待される役割に気付くこと、です。そのような状態に至ると、ある変化が起きます。それは、「お金がもらえるからそうする」のではなく、「それをしたいからそうする」ようになるのです。

現在の我々の意識レベルと言うのは、お金をくれるから労働力を提供する、つまり、お金と言う見返りがあるために自分も働く、ということかもしれません。

しかし、これが自分自身が神に期待される個性に近づいていくと、自らの心境として、「これをしたいがためにこれをする」という意識が強くなってきます。動機として、「見返りがあるからをそれをする」、というのではなく、「それをしたいがためにそれをする」、という意識が強くなるのです。これはそういう心境になればわかります。

こうなってくると、与える愛の循環が始まっていくのです。そして、そういう人が多くなってくるにつれ、また、上記のような貨幣経済の矛盾が暴露されてくるにつれ、徐々に人類は、貨幣やお金と言う呪縛から解放されていくことでしょう。

私の予想では、今後100年で利他の心を元にした経済が運営されるようになり、その後100年、今から200年後くらいにはお金のない世界にシフトするだろうと思います。

<参考著作一覧>