易しい哲学史⑨近代哲学(4)

さて、カントの『純粋理性批判』について考えてみました。結論として、理性認識は三次元の範囲に限定され、物自体の世界の認識は持てない、となります。神や霊魂に関しても理性によって認識できない。それが結論です。

しかし、我々は、社会的な存在であるため、何らかの行動規則に従って生きていくことが必要です。そこで、カントは、「我々は何をなしうるか?」の問いと共に、道徳原則について検討します。それが『実践理性批判』です。

カントの道徳法則は、「君の格率が同時に普遍的法則となるように行為せよ」という言葉によって語られます。難しい言葉ですが、要は、「普遍的な道徳法則に一致するように行動しなさい」ということです。

ここに「何のために?」ということは含まれません。つまり、「何かを得るために行為を手段として行う」、ということはせず、「ただ、道徳法則に従い行動する」ことが要請されるわけです。前者を仮言命法といい、後者を定言命法と言います。定言命法に従い、見返りを求めず、道徳法則に従い行動する。これがカントの道徳哲学であり、『実践理性批判』ということになります。