ニーチェ(1)価値観の崩壊
易しい哲学史と題して話を進めてきましたが、ここからは、現代哲学に焦点を当てたいと思います。
最初はニーチェです。ニーチェは「神は死んだ」という言葉で有名で、人気の高い哲学者かもしれません。ここでは、まずニーチェが何をやろうとしたのかを概観したいと思います。
ニーチェが生きた19世紀後半という時代は、科学が発展していった時期であり、近代以前の神が絶対であるとした世界観が徐々に崩れていった時代に相当します。そして、また、近代哲学によって、人間は理性によって進歩の道をたどると言った進歩史観が打ち出されましたが、人々は帝国主義の下植民地獲得に力を注いており、理性に対する疑問が持たれ始めた時代です。
つまり、それまでの価値観が疑わしくなった今、新たな価値観を生み出していく必要性が考えられるようになった。そのような時期に相当しているわけです。
まずこれがニーチェの哲学を考える上での時代背景です。今までの価値観が疑わしくなった今、新たなる価値観を構築する必要がある。それに取り組んだのがニーチェの哲学であると言ってよいでしょう。