科学は完璧か?⑤知の限界とそれを超えるもの
ここまで、数学にしても科学にしても、その根源である知や理性の営みにしても、それらに対して信頼ある地位を与えることはできないという話をしました。
数学にしても科学にしても、我々の知の営みによって為されており、そして、その知というものが完璧であることを証明できないがゆえに、数学や科学の完璧さも証明することはできないのです。
従って、知のみによって、信頼ある世界を構築することはできません。それが知の限界です。知には限界があるのです。
かつて、カントが、理性的認識には限界があるとして、我々の認識の及ぶ範囲を三次元に限定しましたが、確かにそれが正しいということになるでしょう。
しかし、それでは正しいとは何か?とか善とは何か?といったことについても、結論を提示することができず、この世界は不確実なものとなってしまいます。
世界の確からしさを保証することはできないのでしょうか?
私はそれは可能である、と断言しましょう。
結局、この世界の確からしさを保証するとは、我々の主観が世界の客観的なる姿を映し出すことが可能なのか?という主観と客観の一致の問題に戻っていくわけですが、この主観と客観の一致は可能である、と私は断言しましょう。
それは、知によってではなく、実に意外な方向から主観と客観の一致が為されることとなるのです。