科学は完璧か?④知が完璧であるかも証明できない

数学にしても科学にしても、完璧であることを証明できない。両者に対して信頼ある地位を与えることはできないと言う話をしました。

ここで、更に踏み込むと、私たちは知や理性と呼ばれる能力によって、物事を考えますが、この知や理性ですらも完璧であることを証明することができません。

我々はよく認識間違いを起こしますし、人間の知や理性の能力が完璧であるならば、今までの争いの歴史をどう説明可能でしょうか?

そして、人間の知や理性が正しいのであるとすれば、まず我々はその正しさとは何か?ということの共通認識を持つことが可能であるべきでしょう。しかし、詳細は省きますが、「正しさ」ということに対する万人の共通認識を形成することはできない、と現代哲学は結論付けています。確かに知の次元ではその通りです。

また、カントもそのような形而上学的認識に知の次元で結論をつけようとすると、アンチノミーに陥り、正しいも正しくないも同時に証明されてしまうと言っています。

それゆえに、我々は知の正しさを証明することはできません。従って、知が完璧であるかどうかも証明できません。

我々はいろいろあれこれと考えて、その都度、結論を選び取っていますが、しかし、飛んでも無い思い違いをしているかもしれないのです。それが個人単位で行われることもあるでしょうが、それが国家単位で行われ、第一次世界大戦や第二次世界大戦のように世界を破滅に導いていくような多大なる間違いを犯すことすらもあるのです。

以上、数学も科学も、また、知や理性ですらも、それが信頼あるかどうかを証明できないということを考えてみました。私たちは科学によって、進歩の道を歩んでいるかに見えますが、実は飛んでも無い思い違いをしているかもしれないのです。私たちはそのような不安定な世界に生きていると言えるでしょう。