ニーチェ(2)ルサンチマンと「神は死んだ」
さて、ニーチェの生きた時代背景について考えてみました。そして、この時代は価値の変革期であり、新たな価値観が求められる時代であることを話しました。それに一つの回答を与えたのがニーチェです。
ニーチェはどのような哲学を構築したでしょうか?
まず、ニーチェはキリスト教批判を行います。それまでの西洋的な価値観はキリスト教やプラトン哲学がその源流となって構築されてきたものですが、それを否定したのです。キリスト教はルサンチマンの宗教であり、奴隷道徳であると断じたのです。
ルサンチマンとは、弱者が強者に対して精神的優位性などで恨みを晴らす状態のことです。つまり、「富者が天国に入るのはラクダが針の穴を通るよりも難しい」という言葉を、弱者に対する慰みであると解釈し、弱者に対する市民権の獲得によってキリスト教は世界中に広がっていったのだ、と言うわけです。
このような宗教は、間違いであり、今までのキリスト教的な価値観は正しくないと断じたわけです。正義や真理といったものも、全部嘘であり、本当はこの世の中には絶対的な価値など存在しない、そのような虚無的な状態があるだけである、と主張しました(ニヒリズム)。
まず、ここまでがニーチェの哲学の外観、その前段です。つまり、ニーチェはまず西洋の屋台骨となった価値観の解体を論理的に行っていったのです。つまり、それまで信じられていた神的な価値観を葬り去り、「神は死んだ」と宣言するのです。